救急車に保管していた劇薬の「アドレナリン」を紛失 12月21日 20時24分 沖縄 NEWS WEBという記事を見ました。劇薬である以上、管理にはそれ相応の対応は求められます。しかし、シリンジには針もありませんし、そのままの状態で舐めようが飲もうが、人体にはほとんど影響はありません。ですので、過度な叩きや処分といったことはせず大目にみてやってくれまいか、と思う次第です。
救急隊員が使うアドレナリンについて
救急車内の医薬品は、酸素、乳酸リンゲル液、静注用ブドウ糖、生理食塩水、そして、アドレナリンが積載または救急救命士が携行しています。
アドレナリンの薬理作用は交感神経のα1、α2、β1、β2受容体の刺激作用をもちます。心筋に対しては心収縮力ならびに心拍数の増加をもたらす一方で、皮膚などの末梢血管の収縮作用があり、血圧を上昇させます(救急救命士標準テキストより引用)。
普通に舐めたり飲んだりしたところでは、何も人体に影響はありません。しかし、血管などから投与されると、急激な血圧の上昇、致死的な不整脈の発生などで大変危険な事態に陥ります。このように、薬理作用に危険を伴う薬剤であるため薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)により劇薬に指定されており、保管方法などの取り扱いが定められています。
救急救命士が用いるアドレナリン製剤は、シリンジ(注射器)にもとから薬液が入っているプレフィルドタイプのものが使われます(テルモ株式会社 https://www.terumo.co.jp/medical/drug/000644.html)。
アドレナリンの使用と保管
心肺停止の傷病者に対して、救急救命士は、このプレフィルド入りのアドレナリンを、静脈路(点滴回路にある三方活栓)から投与します。1回につき1本。場合によっては3~5分おきに繰り返して投与します。
それで、その保管方法はというと、一定の温度(常温)で施錠された保管庫で保存することが必要です(常に人の監視下にある状態ならば施錠は必要ありません)。アドレナリンの入ったポシェットやバッグを隊員間で申し送りながら引き継いだり、救急車内に鍵付きの保管庫を据えてその中に入れておいたりします。
アドレナリンの出番は心肺停止という超緊張状態の現場です。現場で落としてしまったり、ドクターカーやドクターヘリのクルーが用いたシリンジとゴッチャになって、さらに持ち帰られたりして、員数が合わなくなったりすることが少なくありません。
アドレナリンの紛失報告
救急隊員が劇薬含む注射液を救急活動中に紛失 石巻地区消防本部|2020年12月30日
浦添市消防、劇薬アドレナリンを紛失 9日後に警察届け出|2020年7月12日 10:26
劇薬アドレナリンを紛失 綾瀬市消防本部|2017年5月13日
救急用薬剤「アドレナリン」紛失事案について 阿南市消防本部|2020年12月18日
救急用薬剤バッグの紛失事案について 笠岡地区消防組合消防本部
http://www.119kasaoka.jp/osirase/adrenarin_funsitu.pdf
救急車内の劇薬「アドレナリン」1本紛失 船橋市消防局|2020.1.23
紛失の劇薬見つかる 福岡・久留米広域消防本部|2018年3月17日
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