救急車への同乗を求めたらこんな状況で実はこまったというお話し

コミュニケーション

救急現場から傷病者を病院に搬送するのが救急隊のお仕事の一つです。
傷病者のことをよく知るご家族や保護者には、病院までの同行を求めたりするのが一般的です。
しかし、様々なケースで困った・・・ということがあります。
ここでは、そんな困ったエピソードと、模範的な〈救急隊としての〉対応を検討してみます。

【ケース1】傷病者は意識不明。てっきり家族だと思って事情を聞いていた人物は、実は近所の他人でした。傷病者を良く知るのはこの方しかいません。付近に家族らしき人も見当たりません。同乗はできればしたくないような表情です。

  • 丁寧な説明を尽くして同乗を依頼する。
  • 同乗は求めない。
  • 親戚などの連絡先を確認する
  • 近所の方の連絡先、ご家族などの連絡先の確認をする。
  • 医療機関で同意書等の書類は書けないので無理には乗せません。

【ケース2】傷病者が、自分のペットを同乗させるよう求めています。一人暮らし、交通事故、出先での急病など色々なケースがありますね。どう対応しましょうか。

  • 置いていきます。(自宅なら)
  • 支援隊を要請する。
  • 知人、親族に預ける。
  • ペットの預かりサービス(ペットシッター)に預ける。
  • ペットの主治医に預ける。
  • 交通事故などは警察と連携する。
  • 署で一時的に預かる。
  • 盲導犬や介助犬の類は無条件で同行します。
  • 時間が許すならペットをみる体制が整うまで待つ。
  • 警察へ協力を要請して一時保護してもらう。
  • 病院側の意向を聞いて可能なら連れていく。
  • 保健所へ時間帯によっては相談を入れます。
  • 保護団体に相談する(あらかじめ、手伝ってくれる保護団体を見つけておく)。

【ケース3】帰路や乗り物酔い体質などを理由に自家用車で行きたいという関係者。病院までの道のりは良く知らないようで、救急車を追尾していくと言っていますが・・・

  • 緊急車両を追尾することは、道交法に抵触することを説明します。
  • 信号無視するなど追尾するようであれば停車し注意を促します。
  • 搬送先が急遽変更することもあるので、連絡先を聞いたうえで電話に出られるように依頼する。
  • 地図を書いて(案内書を渡す)信号を守って来るよう伝える。
  • 最寄りの署所に立ち寄ってもらい、署員に経路を聞くよう促す。

【ケース4】傷病者は実は大家族。父親の病状を心配して妻と子供5人が同乗を求めています。子供は皆、小学生(12歳未満)以下です。救急車の乗車定員は7人です。

  • 定員オーバーで走行できないことを伝えて別の交通手段を選択してもらう。
  • 心配をまずは受け止めたうえで、別車両で来てもらう。
  • 保険証、薬手帳、履物等を預かって、妻には後から来てもらう。
  • 緊急避難的に同乗させる。「緊急自動車の法令と実務(東京法令出版)」から引用・山間部あたりでけが人が多く出たため定員を超えて収容する場合など、事案によっては、やむを得ないことが数多く予想される。これらは、形式的には違法であるが、職務上はやむを得ないと認められる。
  • 知人、親族に連絡し対応してもらう。

【ケース5】入院は不要だが病状としては急を要する傷病者。救急車で帰りの送迎を求め、だめならば搬送を拒否しています。

  • 帰りも救急出動することがあるなどの合理的な説明をして不可能なことを説明する。
  • 帰りの交通手段として、電車、バス、タクシー、介護施設の送迎車、保健福祉部局の職員、院内にあるサービスなどの手段を事前に調べておく。
  • 診察の結果で状況は変わるので、先ずは診察を受けることを説明する。
  • 病状の悪化などリスクを説明しても、搬送を拒否されれば本人の責任において不搬送とする。
  • オンラインメディカルコントロールで指示指導医と搬送について相談する。もしくは電話口で直接医師とのやり取りを行ってもらう。
  • 救急車での搬送を拒否するのであれば、家族や関係者と自家用車等で病院受診を勧める(急変があれば、再度119番通報を行ってもらうことを説明した後に)。

傷病者のためにも一刻も早く医療機関へ搬送したいのに、色々な理由で困ることがあります。
救急隊としての使命、住民サービスの向上、公務員としての倫理観、医療機関との信頼関係など、彼らが板挟みになっている状況はとても複雑です。
せめて、傷病者のこと以外で苦労を掛けるようなことだけはしたくないですね。

そして、ここで紹介した内容と対応は、あくまで一つの例です。
消防本部の内規によって、個々に書かれていることと違う対応が定められている場合もありますのでご理解、ご注意ください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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