救急医療に関するトレーニングコース|おすすめ7選

学会やセミナー

コロナ禍の前は全国でおよそ50種類以上の救急トレーニングコースが開催されていました。各所属やメディカルコントロールから学習を必須とするものから、少ない現場経験を補完したり学習意欲や好奇心を駆り立てるものなど、受講動機はそれぞれでしょう。
各コース運営団体では、コロナの状況を踏まえながら手探りではありますが、コース開催の兆しがみられます。
そこで、現職の救急隊員はもちろん、救急救命士の学生さんやファーストレスポンダーといわれる方々におすすめのコースを、特徴や現在の開催状況などとともに紹介していきます。


JPTEC ジェイピーテック 【おすすめ度 ★★★★★】

JPTEC協議会
JPTECは日本救急医学会公認の病院前外傷教育プログラムであり、医師向けのJapan Advanced Trauma Evaluation and Care ( JATEC ) との整合性を保つことにより、病院前から病院内まで一貫した思想のもとに標準的な外傷教育を行い、我が国において、防ぎうる外傷死亡(preventa...

病院前における外傷救護活動のスタンダードです。救急隊員はこの活動指針を学んでおかないと仕事になりません。
というのも、メディカルコントロールで定められる重症外傷活動プロトコールがこのJPTECの活動フローに倣っているからですね。
和歌山県消防学校では救急標準課程でプロバイダーコースを履修します。
重症外傷の傷病者に対して、重症度緊急度判断を目的とした観察技術、現場で行う厳選された緊急処置、トラウマバイパスを意識した医療機関搬送、これらが学習する最重要事項となります。
おすすめのコースは「プロバイダーコース」で、コースを修了するとJPTECプロバイダーとして認定されます。資格有効期限は3年。この資格を有することを条件とする消防やメディカルコントロール協議会もありますので、資格を切らさないように更新コースもあります。
コース受講料は5000円~15000円といったところです。

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感想(1件)

JPTEC協議会ではファーストレスポンダー用やインストラクター用のテキストも発行されています

AHA アメリカ心臓協会提供コース  【おすすめ度 ★★★★☆】

アメリカ心臓協会【American Heart Association,AHA】は、アメリカ合衆国で設立された非営利団体です。心血管疾患や脳卒中で負う障害や死亡事故を減らすための一環として、心血管における医療資金を提供し、健康的な生活についての啓蒙活動を行い、心臓の治療が真っ当なものとなるよう奨励しています。AHAは『AHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン Guidelines for Cardiopulmonary Resuscitation (CPR) and Emergency Cardiovascular Care (ECC) を公開しています。これは、米国や世界中の医療従事者、会社、および病院で使用されている救命プロトコールの基礎になっているものです。
コースで学習する内容は、このガイドラインに則ったもので、教材はもちろんのこと指導方法なども学習効果が期待できるエビデンスをもとに画一化されています。インストラクターがもつ成人学習の技術や知識は相当なものです。
主催はトレーニングサイトと呼ばれるAHAから認定を受けた団体が行っています。
有名なところでは、日本ACLS協会ガイド日本BLS協会日本循環器学会国際トレーニングセンター、などがあります。申し込みは各サイトの申し込みフォームなどで行えます。
おすすめのコースはずばり「BLSプロバイダーコース」です。全年齢層の傷病者に対する1次救命処置について学びます。心臓マッサージ(胸骨圧迫)、AEDの使い方、窒息の解除、チームダイナミクス(チーム蘇生)など、質の高いCPRを習得します。
心肺蘇生のことなんて・・・って思うでしょ?でも、得るものは多いです。自分の技術の甘さにも気づきます。
難点は、やはり教材やコース受講費用が高価なところです。
受講料は主催するトレーニングサイトによりますが、大体20000円前後(テキスト別)となります。

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感想(5件)

受講にかかわらず救急隊員はBLSやACLSマニュアルは一読しておきたい

ICLS アイシーエルエス 【おすすめ度 ★★★★☆】

日本救急医学会・ICLS
日本救急医学会による医療従事者のための蘇生トレーニングコース。コース認定や指導者を養成するためのワークショップ開催、指導者の学会認定なども行っています

医師、看護師、救急救命士だけでなく広く医療従事者を対象とした、心肺蘇生を学習するトレーニングコースです。内容はJRC蘇生ガイドラインに基いて構成されています。いわば、AHAがアメリカ版だとすると、ICLSは日本救急医学会が主催する日本版と言えます。コースの到達目標は、BLS(一次救命処置)とAED(自動体外式除細動器)に習熟し、ALS(二次救命処置)を実施できるようになることです。
日本救急医学会が認定するコースディレクターにより開催されているので、内容も画一化されており質も補償されています。
コースの受講料は10000円前後ですがコースや地域で差異はあります。このICLSの内容を含む(ICLS認定)2日コースなどは少し高めになります。

AHAのACLSコースと何が違うのかというと、ICLSは”Immediate Cardiac(心臓) Life Supportの略です。日本語で言えば、「心停止に即座に対応する処置」とでもなるでしょうか?”という記載が日本ACLS協会のサイト(https://acls.or.jp/dictionary/difference/)に記載があります。
つまり、医療従事者として基本的な蘇生に関する技術を学びたいならICLS、鑑別診断や治療指針といった少し発展的なことを学びたいならAHAのACLSといった感じでしょうか。初学者の救急救命士には、ICLSコースのほうが向いているかもしれません。

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AHAのACLSコースはちょっと敷居が高い場合はICLSから学んでみよう

ITLS アイティエルエス Accessコース【おすすめ度 ★★★☆☆】

https://itlsjapanweb.wixsite.com/itls-japan-web

International Trauma LifeSupport(ITLS)はアメリカ救急医学会アラバマ支部の地方プロジェクトとして始まった初の病院搬入前の外傷処置教育訓練コースです。JPTECの元となったPTCJもITLS(当時BTLS)のエッセンスを導入した日本版といえます。
運営はITLS日本支部が行っていて、Advanced、Pediatric、Accessが主に国内で開催されているコースです。
なかでもAccess(アクセス)コースがおすすめです。このコースは交通事故車両に関連する外傷傷病者に対しての救出、観察、処置、搬送を迅速に行えるように学ぶためのものです。実技は実車を使って、車両の固定、ドアの開放、ルーフの切断を行います。受講生はPPEをフル装備で参加してとても実践的です。
コース受講料は21000円です。
なお、Accessコースを受講するためには、ITLS Advancedコースを受講済かJPTECプロバイダーである必要があります(受講要件はホームページで確認してください)。ベーシックな外傷処置を修得した人への発展的なコースという位置づけです。

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ちなみにITLS Advacedコースはパラメディックと同じ処置を学習するので興味のある方はおすすめ

PSLS ピーエスエルエス 【おすすめ度 ★★★☆☆】

JSEM | PSLSについて

Prehospital Stroke Life Support(PSLS)は、病院前からの早期治療による脳卒中の予後改善を目指し、適切な現場処置と情報収集による適切な医療機関への搬送を目指すコースです。
座学と実技からなる1日コースで、指令から傷病者接触、初期評価、重点観察、病院連絡、車内活動という各シーンにおいて、重症度緊急度判断や神経学的所見のとり方まで、みっちり学ぶことができます。
脳卒中スケール評価や、GCSの採点、意識障害の傷病者に対してのフィジカルアセスメントを学ぶには、うってつけのコースです。
日本臨床救急医学会 教育研修委員会が主体となってISLS(Immediate Stroke Life Support 神経救急蘇生)が開催されていますが、それの病院前のエッセンスを抽出したものが、このPSLSと言えます。
また、PCEC・ピーセック(Prehospital Coma Evaluation and Care)という、病院前における意識障害患者の原因検索と緊急処置を行い、適切な医療機関に搬送することを目的としたコースも共催されています。
PSLSの単独開催は、消防学校教育や消防長会の研修行事として、救急隊員向けに開催されることがあります。和歌山県では救急科標準課程で開催されています。
受講費は5000円前後です。

PSLSガイドブック(2015) 救急隊員による脳卒中の観察・処置の標準化 [ PCEC・PSLS改訂小委員会 ]

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感想(1件)

PCECコースとしても開催されているのでコースにあったテキストを購入しよう

MCLS エムシーエルエス 【おすすめ度 ★★★☆☆】

https://jadm.or.jp/contents/MCLS/

Mass Casualty Life Support (MCLS)コースは、災害医療または防災業務に従事する者が、災害時に発生した多数傷病者への対応を適切に行うことにより、傷病者の救命率と社会復帰率を向上させることを目的に開催されています。簡単に言うと「多数傷病者への医療対応標準化トレーニングコース」です。
主催は日本災害医学会MCLS運営委員会です。
対象は消防職員、警察職員、災害現場医療に興味のある医療従事者(医師・看護師・コメディカル・病院事務官など)としており、DMAT隊員のベーシックな教育として取り入れられています。
座学以外にも、多数傷病者発生を想定した机上訓練やトリアージやタッグの記載といった実技訓練も取り入れられ、1日みっちりのコースですがあっという間の内容です。
初学者向きというより、消防官なら最低でも1~2年のキャリアがあるほうが机上訓練はイメージしやすいので、消防学校では専科教育(警防科や幹部科)に取り入れられることもあります。
受講費用は10000円前後でコースにより異なります。
コースの種類としては、CBRNE(シーバーン)や大量殺傷型テロ対応といった標準コースを受講した人を対象とした発展コースもあります。
また、消防長会の企画ではマネージメントコース(消防指揮隊特化)などもあります。
なお、標準コース受講にはJPTECプロバイダーなど、基本的な外傷処置コースを修得しておいたほうがよいでしょう。

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感想(10件)

部隊活動を学んでいくためにはまずこのMCLSのコースを受けよう

PEMEC (ピーメック)【おすすめ度 ★★★☆☆】

PEMECホームページ
PEMECホームページ

Prehospital Emergency Medical Evaluation and Care(PEMEC)は、救急隊員による疾病の観察・処置の標準化アルゴリズムです。JPTECが外傷傷病者なら、このPEMECは疾病傷病者に対する評価と対応能力向上を狙っています。
内容は日本臨床救急医学会およびPEMEC小委員会がPEMECアルゴリズムの監修・編集を行っていて、これに基いたコース運営を行っています。しかし、年間の開催件数が非常に少なく、日本臨床救急医学会学術集会の併設コースなどしか受講のチャンスはありませんでした。しかし、2020年度からは運営を一般社団法人「臨床教育開発推進機構(ODPEC)https://odpec.or.jp/」に移譲される予定なので、今までより開催回数は増えるのではないかと推測します。
対象は救急隊員や救急救命士です。
受講費は12000円前後です。
コースは講義と模擬活動練習となっており、3名の受講生が1つの救急隊となって様々なシナリオブースを経験して学習していきます。用意されるブースは、呼吸困難、動悸、頭痛、胸痛、背部痛、腹痛、腰痛、けいれん、めまい・ふらつき、喀血・吐血、下痢、血尿などがあります。
安定したコース開催が実現すれば、JPTECと同じように、救急隊員としてスタンダードなコースとなるでしょう。

救急隊員による疾病の観察・処置の標準化 PEMECガイドブック2017(2017) 救急隊員による疾病の観察・処置の標準化

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感想(4件)

これからスタンダードなコースになっていくと予想します

上記のコースは全て2021年末の状況で筆者が個人的に調査した上での内容です。なお、今回取り上げたコースは全て効果測定により受講生の学習到達度が一定程度担保されるコースばかりをピックアップしています。受講にはそれなりの予習も必要ですので、事前にテキストを購入するなり、受講経験者にアドバイスを受けるなりして挑みましょう。また、それぞれインストラクターやファシリテーターとして指導者の道も用意されています。皆さんのご検討を祈ります。

最後までご覧いただきありがとうございます。

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