学術集会の座長を頼まれた|うまくやるポイントを伝授

学会やセミナー

学会員の評議員として在籍していたり、消防職の救急救命士でもある程度のポストになるとめぐってくる座長というお仕事。
ローカルな症例検討会から学会の地方会、消防の救急班長クラスや指導救命士になると救急隊員シンポジウムの座長の話もやってきます。
「発表者の紹介をして、会場から質問を受け付けて、助言者に話振って、時間管理して終わりじゃないの」
まぁ、そうなんですけどね。
先日、初めて地域MC症例検討会の座長をに指名された後輩職員がいました。
その時、私からアドバイスしたことをもとに、少しポイントを紹介したいと思います。

座長の仕事

座長、響きだけでもたいそうなポストだと感じます。若いころに参加した学会では、救急の指導医や消防の大幹部の方がされていた印象なだけに、今でも大役だという気持ちはぬぐえません。
でも、そのセッションの「司会者」「進行役」であり、中身は発表者が作るものだと割り切ってしまえば肩の力もすっと抜けるのではないかなと思います。皆が注目しているのは発表者ですから。
座長がセッションを進行するうえで行わなければならない仕事は

1.セッションの大まかなコンセプトと何を題材にしたものかを紹介
2.発表者への質問の仕方を聴衆に説明
3.演題名と発表者の紹介
4.質問者の捌き
5.質問が会場から出なかった時に発表者に座長から質問
6.助言者への振り

こんなところが挙げられます。

集会前にしておくこと

学術集会などに参加する前になりますが、与えられたセッションの発表内容として抄録集には目を通しましょう。そして、自分のあまり知らない話題ならば徹底的にリサーチが必要です。運営側としても、全くの専門外である方を抜擢するとは思いませんが、それでも救急救命士は救急の専門ですから、救急〇〇学会だったらどのセッションでも任される可能性はあります。

そのセッションが「口頭指導」をネタにしたものだったとき、あなたは通信指令員の経験がなかったとしても、それを何とかこなさなければなりません。
国から示された口頭指導要領や通信指令員マニュアルに目を通すなり、職場の経験者に話を聞くなりといった事前準備は絶対に必要です。

これに付随して「発表者への質問」も考えておきます。
どういうことかというと、会場からの質問が出なかったときのストックとしての質問です。時間の調整としても使えます。
もちろん、事前に考えた質問は発表内容で明かされてしまうこともありますから、いくつか違う切り口で考えておいたほうがいいですね。
一番リスクが少ないのは、
白か黒かハッキリしていない事項で「あなたの個人的な意見としてはどうお考えですか」とか
「この発表をきっかけにどのような取り組みを具体的にされたいですか」といったのがいいのかなと思います。

他にも
「〇〇の部分について少しわかりにくかったのですが、もう少しご説明いただきますか」
「どのようなところで一番ご苦労様されましたか」
「今回の取り組みのきっかけとして最も大きかったのはなんですか」
「実際の救急現場へどう応用されるか具体的な展望はありますか」
など、建設的な内容がいいですね。

セッション開始前にしておくこと

10分前には会場入りして運営の方に声を掛けます。
発表者の方も、同じようなタイミングで会場入りされるので、挨拶がてら声をかけてみましょう。特に難しい名前や所属の読みは必ず確認を取ります。
以前私が某学会で発表待ちしていた時に、座長(当時のA大学の教授)のほうからお声がけいただき、名前の読み方を尋ねられました。
こんな高名な方に・・・と自分から挨拶をしに行かなったことを猛省した覚えがあります。
どちらから、ということはないですが、名前の言い間違えは両者にとっていい気分ではありませんので気を付けましょう。

セッション開始|座長の自己紹介

セッション開始の1分くらい前に会場へ第一声を掛けます。

「それでは、時間となりましたので、一般演題〇〇、〇〇のセッションを開始したいと思います」
もし、会場に運営から上記のアナウンスが流れるような集会でしたら、そのアナウンスのあとに続いて、

「このセッションの座長を務めます、〇〇の〇〇です。どうぞよろしくお願いいたします」

全体の進行が遅れているようなら

「演題は全部で〇席ございます。おひとり発表時間〇分、質問時間は〇分ですので、よろしくお願いいたします」

というように追加してもいいでしょう。

座長が2人いるときや、助言者がいるときは自己紹介を促します。

発表者の紹介|発表中に考えること

「それでは、第1席、〇〇の〇〇様、お願いいたします。演題は、〇〇〇〇〇です」

発表者の紹介をして発表を促します。
内容を聞きながら、発表内容を要約していきます。
これは、抄録にアンダーラインを引くだけでも構いません。発表者が何を言いたかったのかということを、大体20秒くらいのボリュームで考えます。
さらに、自分が用意した質問が通じるものかもチェックしておきます。

発表が終わったらすること|質問捌き

発表が終わりました。

「〇〇様、ありがとうございました」から続いて「〇〇に対して〇〇をしたら〇〇だったという、大変興味深い内容でした。教科書通りとはならなかった貴重な症例でした」というように簡単でいいので演題の内容をまとめたら、
「それでは、会場から質問を受け付けます。質問をされる方はマイクまでお進みください」または「挙手にておしらせください」とアナウンスします。

質問者がいたら「それでは、ご所属とお名前をお願います」と指します。
時間が許すようであれば2人くらい質問に応じます。
もし、だれも質問者がいなかった時は、事前に考えておいて質問を
「それでは、私から1点伺いたいのですが~」と切り出して質問します。

もし、会場からの質問で盛り上がりすぎた場合、座長が割って入る必要があります。
「手短にお願いいたします」とか
「時間が過ぎておりますので、申し訳ありませんが質問はセッション後に発表者に直接お願いいたします」と言って、その場を切り上げましょう。

経験上、発表者が回答に困った→会場から共同演者が出てきた、というパターンは結構長引きます。
さくっとまとめましょう。

助言者への振り

質問をさばいた後は、助言者へ今回の発表について意見を求めましょう。
空気を読んでくれる人なら、時間を勘案しながらコメントをしてくれます。
また、助言者が医師だった場合は医学的な側面でコメントを求めてもいいでしょう。
特に発表者への質問で困っているようなときは、助言者に意見や回答を求めたりしてもかまいません。

質疑応答の後には「〇〇様、ご発表ありがとうございました(ぱちぱちぱち)」とくくります。

セッションの最後に

全員の発表が終わったら
「以上で〇〇のセッションはすべて終了になります」
「最後に、ご発表の方、ご討論に携わった方々に感謝の気持ちをこめまして、拍手をしたいと思います。どうもありがとうございました(ぱちぱちぱち)」とまとめて終了します。
時間が押してしまっていたら「不慣れな進行で時間が超過してしまい申し訳ありませんでした」と加えてもいいでしょう。
逆に時間が少しあった場合は、助言者にコメントを求めたり、自ら印象を述べたりしてセッションの総括を添えます。

先生? 様? 敬称をどうするか

座長として迷うのが「敬称」です。
日本救急救命学会には、学術集会での敬称で「先生」を使用するのは「医師」のみとしましょう。というコンセンサスがあります。
たしかに、救急救命士でも大学で教鞭をとられているいわゆる「先生」もおられます。
「先生」という敬称は日本独特で、教育者、政治家、法曹家、評論家などオールラウンドに使えますが、逆に「小ばかにされているみたいで」と抵抗される人もいます。呼び込みやセールスで「しゃちょう~」とか「せんせ~」とすり寄られるイメージでしょうか。
私は発表者が救急救命士だったら「さん」か「さま」でいいなんじゃないかなと思います。

筆者の思い

座長指名されて、セッションで失敗したくないという気持ちはわまりますが、演者に事前にコンタクトをとって「どんな質問をしてほしいですか」とか、助言者に「どんな質問されますか」といった下調べをする方がおられます。
特に救急隊員シンポジウムとかはそんなかんじですよね。
まあ、パネルディスカッションである程度の方向性は作っておきたい場合は、それなりのシナリオが必要かもしれません。

しかし、一般演題でそれ必要ですか?というのが私の意見です。
特に、昨今の学会は発表当日までスライドの変更が可能だったりします。演者はそれだけぎりぎりまで内容を練ることができます。抄録から大きく外れたことは言いませんが、それでも、細かなニュアンスや想定される質問をつぶしていく作業を行います。
その姿勢にやや水をさすような座長のおぜん立て攻撃は、ちょっといただけないなぁと思う次第です。
自分の座長としての仕事を全うしたい気持ちはわかりますが、発表は生き物です。
会場からどのような質問が飛び出すやもしれません。
そんな状況でも臨機応変に対応できてこそ、重責を果たしたと言えるんです。
ぜひとも、臆せず、会場での一発勝負に挑戦してください。良くも悪くもきっといい経験になると思います。

最後までご覧いただきありがとうございます。

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