救急救命士がやりがちな超ダサいスライドをどうにかしたいvol2

PowerPoint

この世にはプレゼンテーションのノウハウを伝承する書籍が溢れています。コンセプトの多くは「大きな文字で」「シンプルで」「心に残る」という言葉が列挙されていることでしょう。症例報告や学会発表を多く経験している皆さんは、そういった書籍を読みあさり、少しでも聴衆をはっとさせるすごいスライドを作ることに躍起です。しかし、救急救命士が作るスライドはダサい、見づらい、よくわからないのオンパレードです。
いいこと発表しているのにスライドがなぁ、とならないように、かっこいいスライドづくりのノウハウを紹介します。救急救命士の皆さん、ダサダサのスライドを一緒に卒業しましょう。

スライドのデザインコンセプト

2012年後半から少しずつ見かけるようになった「フラットデザイン」というコンセプトをご存じでしょうか。ドロップシャドウや質感を表現するテクスチャといった余分なデザインを一切省きつつ、厳選された色、グリッドを意識した配置、シンプルなタイポグラフィー(文字を華やかに、アートのようにデザインする手法)などを使ったデザインといわれています。主にWebコンテンツで取り入れられており、利用者目線で整理された、すっきりとレイアウトで、特にモバイルユーザー向けインターフェースのデザインとして数多く活用されています。
プレゼンテーションの分野では、これに視聴者の可読性とメッセージの伝達力を兼ね備えた、シンプルデザインを心がけなければなりません。

また、20年くらい前までスライドの縦横比は4:3(もしくは35mmスライド)でしたが、PCの画面比率に対応して16:9が今の主流となっています。
ZOOMなどのネット会議システムを使って発表を中継する集会では、PCのデスクトップが共有されて映し出されるので、この比率が推奨されている場合があります。さらに、アニメーションや画面切り替えの効果も多用しないようにします。これは、クリックする機会が多くなり発表者の負担が増えてしまうこと、聴衆がその動きに注目してしまい、聞くことが疎かになってしまうことが理由です。
また、ネット中継や録画が行われる場合、回線やPC作動の負担となるので禁止している学会もあります。

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あまり凝ったスライドはネット会議では不向き

新たにプレゼンテーションファイルを作成したら、まずはスライドマスターの設定から行いましょう。〔表示タブ>>スライドマスター〕

そして、背景、配色、フォントの順で決めていきます。

背景は特にシンプルにしましょう

一昔前のスライドは、ブルーバックというスライドが主流でした。暗い会場でも視認性がよく、何より重厚感があって「医学」という雰囲気がありました。また、ポジフィルムで作っていた時代、スライドに付着した埃などが目立たないというメリットもありました。

しかし、今ではパソコンのソフトで作成したものを、スクリーンやモニターに直接表示させることができます。さらに、プロジェクターの明度も高くなって、会場の照明を落とさなくても、スクリーンが見えやすくなりました。また、PowerPointの普及によりビジュアル重視の資料が重宝される時代となり、最初から様々なデザインテーマが同梱されるようになりました。
マイクロソフト社からも無料のテンプレートがダウンロード(https://templates.office.com/ja-jp/templates-for-powerpoint)できますし、ほかにも企業や一般の方々から配布されているフリー素材がたくさんあります。大変見栄えもよく、中にはアニメーションなども取り入れた完成度の高いものもあります。

スクリーンショット 2020-07-26 13

ところが、アニメーションも含め、凝ったスライドはそればかりに目が行ってしまい、肝心の伝えたい内容に注目を集められません。デザイン優先のため、文字を配置するエリアが大きく制限されたりもします。ですから、あえておすすめする背景はシンプルな白か黒、もしくは薄いグレーです。少し工夫をされるのなら、軽くグラデーションを施したぐらいのものが、聴衆に伝えたいことを強調できるデザインです。

また、主催や団体のロゴマークをすべてのスライドに表示しているのもよく見かけます。表示はタイトルページだけにするなりして、デザインのスリム化を図りましょう。

また、会場の条件によっては、聴衆で下端が見えない場合があります。余裕をもって余白を設定し、注目が必要な内容は記載しないようにしましょう。

色の選び方

使用する色選びは非常に重要です。使用する色の数が多くなると、読みづらいスライドになってしまいます。背景や文字の色を含めて1ページにつき3~4色くらいまでに抑えます。「背景色」、スライドのイメージとなる「メインの色」、標準の文字色となる「基本色」、ポイントを示したいときの「強調色」の4色を決めましょう。色選びではMicrosoft Officeで標準的に用意されている赤、青、黄、明るい緑などの原色系は避けましょう。これらは彩度が高すぎてプロジェクターで投影したとき目に優しくありません。

特に重要なのはメインの色です。メインの色はコンセプトカラーとなるものです。落ち着いた印象を与える少し彩度を落とした色を選びましょう。 “フラットデザインカラー”などでネット検索すると、メインにふさわしい色のサンプルを探すことができます。ヒットしたカラーバーなどの画像を保存して、カラーパレットのスポイトツールで吸い取ると、その色を登録することが出来ます。

「フラットカラーデザイン」などのキーワードでネット検索(画像)する
気に入ったカラーパレットをクリップボードにコピーして
PowerPointのスライド画面に貼り付けてカラーサンプルにする。さらにカラーを指定したいパーツのプロパティで[スポイト]を選ぶ
狙った色をカラーパレットから吸い取ることができる
[スポイト]で選んだ色が最近使用した色に追加されるので簡単に呼び出すことができる

大体の方は、プレゼンテーションのイメージカラーとなるメインの色から決めると思いますが、発表のテーマにそのカラーがマッチしているかということも意識しておきましょう。例えば、低体温症の症例報告に暖色系を選んだり、反対に熱中症の症例に寒色系を選んだりすると、慣習とは少し異なる感じがします。

低体温症の発表で暖色は向かないよね

本文に使う文字色は黒を使うのが無難ですが、暗めのグレーもおすすめです。
背景が白の場合、コントラストが抑えられて疲れ目を防ぎます。
強調する部分はフォントを大きくしたり、太くしたり、色を強調色に変えたりします。強調色は色相環上でメインの色と向かい合う位置の色“補色”を中心に決定するとよいでしょう。
色選びに迷ったら、ネット上にツールが公開されていますので活用してみましょう。

[ HUE / 360 ] The Color Scheme Application

カラーデザインにおける黄金比率を意識した場合、基本:メイン:強調の比率が7:2.5:0.5くらいにします。

ただし、黄色や明るい赤は視認性が低いため、濃い赤もしくは背景を赤で塗りつぶして文字を白抜きにするとよく目立ちます。
また、こうすることは色覚異常にも配慮したカラーユニバーサルデザインになります。
ただ、このときに塗りつぶしに違う色で枠(エッジ)をつけないようにします。枠をつけると、人間はまず枠を認識し続いて文字を理解しようとしますので、認知のプロセスが一つ増えてしまいます。枠囲みで強調したい場合は塗りをなしにします。


以上、スライドの基本デザインについてポイントを紹介しました。
シンプルデザインのスライドは、作者にとって何か味気ない気もします。
しかし、視聴者にとってはカラフルだったり、凝ったアニメーションがあったりするスライドより、ずっと発表内容が頭に入るスライドなんです。
プレゼンの本懐は、発表内容に共感してもらうことなので中身が入らないスライドは全く意味がありません。
付け刃のテクニックより、プレゼンテーションの本来の目的を思い出してスライドを作成しましょう。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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